
当教室では大学院統合医科学専攻の演習として、「鴨川統計集会」(Kamogawa Statistical Conference; KSC)を実施しております。
中田 美津子「統計学のための線形代数学」
線形代数は、単なる行列計算の体系に留まらず、多変量解析や分散分析といった現代統計学の強固な基盤を成している。しかし、数式上の定義と実データにおける統計量の意味が直感的に結びつかないケースも少なくない。本発表では、行列を「空間の変形(写像)」として捉える幾何学的視点を用い、直行射影行列、固有値分解、および変動の直交分解といった線形代数の主要概念を統計学的見地から再検討する。(日本行動計量学会2025年度線形代数サマースクール講義資料より講師の許可を得て再構成)
堀口 剛「自動視野計アイモの3つの検査アルゴリズムにおけるMD予測区間幅の比較」
緑内障診療では、視野障害の進行判定において、測定値の変動が測定誤差によるものか真の変化によるものかを見極めることが重要である。本研究では、自動視野計アイモの3つの検査アルゴリズム(AIZE-Rapid、AIZE-Ex、AIZE-Rapid-Ex)を対象に、安定眼の反復測定データから混合効果モデルを用いて個人内分散を推定し、次回測定値の予測区間を算出した。さらに、アルゴリズム間でMD値のばらつきを比較し、検査時間やベースラインMDとの関連も含めて検討した。発表では、これらの解析結果とその解釈について報告する。
三島 遼「ベイズ流臨床試験における平均第一種過誤確率制御のための情報借用量の較正」
ベイズ統計における先行試験情報の借用は新規試験の標本サイズを低減し得る。一方で、第一種過誤確率の上限を制御するという規制上の慣習により、有効性を支持する既存データの借用は許容されにくい。本研究では、情報借用を伴う二値アウトカム単群試験を対象に、平均第一種過誤確率に基づく較正が試験の動作特性に与える影響を検討した。シミュレーションの結果、第一種過誤確率の上限に基づく較正と比べて、偽陽性リスクの低減と情報借用の両立に資する可能性が示唆された。
内藤 あかり「バスケット試験における情報借用法の再考」
バスケット試験は複数の層に対して共通の治療法の評価を行う臨床試験デザインである。バスケット試験での統計解析手法として、近年、ベイズ流階層モデル等の層の類似性を考慮して層間で「情報借用」を行う方法が数多く提案されている。これらの手法は論文において主に各シナリオにおける検出力と第1種の過誤確率の観点から検討がなされている。本発表では、先述した評価指標以外の観点から情報借用のメカニズムについて考察を行う。
兼松 友希「日本の医療保険者データを用いた2型糖尿病患者における経口セマグルチド投与後の体重減少予測モデルの開発」
2型糖尿病では,血糖管理に加えて体重管理が重要であり、過体重や肥満を伴う患者では体重減少によって代謝指標や合併症リスクの改善が期待される。経口セマグルチドであるリベルサスは、血糖低下作用に加えて体重減少効果を有する薬剤であるが、実臨床においてどのような患者で十分な体重減少が得られるかは明確ではない。本研究では、健保・国保・後期高齢者のレセプトおよび健診データを用いて、リベルサス開始後の体重減少を予測する臨床予測モデルを開発する。これにより、治療開始前または早期の段階で体重減少が期待される患者を把握し、個々の患者に応じた治療選択や生活指導を支援することを目的とする。
手良向 聡「再生医療等製品の条件及び期限付き承認:なぜベイズを使わないのか!?」
再生医療等製品の条件及び期限付き承認は、2026年3月時点で8品目に与えられたが、2品目は期限内に有効性を示すことができず、今後もこのような事例が発生する可能性がある。今回、全品目について承認事例と承認までの経緯を調べたところ、統計的決定規準が設定されていないなど、試験デザイン上の問題があるにもかかわらず承認されている事例も多く、審査基準が明確でないという課題が認められた。また、FDAベイズ流臨床試験ガイダンス案(2026)に基づく、ベイズ流デザインのいくつかの評価指標を用いて、製造販売後臨床試験の再デザインの考え方を紹介する。
河原 理久
兼松 友希
森川 咲
Feng Xiaohang
横田 勲
笹川 昌起
村田 翔平
大庭 京子
徳田 涼介
長谷川 洋平
宇田 大祐
石丸 真璃子
土橋 亮太
岩井 宏樹
西村 優佑
谷口 雄基
本田和暉
横谷 優作
当教室では学内で以下の講義を担当しております。
鴨川統計集会を参照してください。
生物統計学分野における最先端の研究について講義・演習を行う。
医学研究の統計的方法論について課題を設定し、文献レビュー、既存手法の整理、新規手法の開発・提案などを行えるように指導する。また、医学研究データの統計解析に基づいて、予後因子の同定、予後指標の構築、予防・診断・治療効果の推定を正しい方法で行えるように指導する。
医学研究において頻度流統計学(主に統計的仮説検定、P値、信頼区間)を正しく利用するための心得について解説した上で、将来主流になるであろうベイズ流統計学の基本的考え方と可能性を解説する。
予後/リスク因子解析は観察研究等のデータから重要な情報を得る基本的手法の1つである。また、患者をリスクグループに分類する臨床予測モデルは臨床に有用なツールとなり得る。本講義では、予後/リスク因子解析および臨床予測モデル構築の方法論を基礎から解説する。
7/22 4限 (中田) 北臨床講義室、 10/14 3限(中田) 北臨床講義室
臨床研究およびメタアナリシスの方法論および統計学的推論の基本的考え方を理解する。
臨床試験論文を正しく読むために、CONSORT声明(臨床試験報告ガイダンス)に基づいて試験デザイン、統計解析手法、結果の解釈などについて指導する。
研究計画の方法として、臨床研究(臨床試験・観察研究)の方法論を理解した上で、研究実施計画書の概要が作成できることを目標とする。統計解析の方法として、データの適切な要約と視覚化の仕方、統計手法を正しく理解した上で、研究デザインおよびデータに対応した統計解析が行えることを目標とする。
生物統計学は、臨床・疫学研究の方法論の基礎となる学問である。臨床・疫学研究の計画・デザインの段階から統計解析・報告の段階まで、生物統計学の知識とその活用が必須となる。本講義では、数学的な厳密性を保ちつつ、実践における有用性を重視して、生物統計学に基づく科学(ヘルスデータサイエンス)の考え方を講義する。
| 1. 9/29 | 3限 | 臨床研究と生物統計学(手良向) |
| 2. 9/29 | 4限 | データの記述と推測(中田) |
| 3. 10/6 | 3限 | 頻度流統計学とベイズ流統計学(堀口) |
| 4. 10/6 | 4限 | 2群の比較(内藤) |
| 5. 10/13 | 3限 | 分散分析と一般線形モデル(中田) |
| 6. 10/13 | 4限 | 交絡バイアスとその調整(松山教授・非常勤講師) |
| 7. 10/20 | 3限 | 生存時間解析(内藤) |
| 8. 10/20 | 4限 | ロジスティック回帰分析とコックス回帰分析(手良向) |
| 9. 7/22 | 4限 | 観察研究デザイン (中田) | |
| 10. 7/29 | 3限 | 臨床試験デザイン(1)(堀口) | |
| 11. 7/29 | 4限 | 臨床試験デザイン(2)(堀口) | |
| 19. 10/7 | 4限 | 評価尺度の信頼性と妥当性 (中田) | |
| 20. 10/14 | 3限 | メタアナリシス・費用効果分析(中田) | |
| 21. 10/14 | 4限 | 診断法の統計的評価(講義の確認テスト)(手良向) |